「妖怪馬鹿」として生涯を捧げたい

一昨年に妖怪検定中級の合格を手にしてから一年が過ぎ昨年、妖怪検定上級の合格をいただきましたことは、僕のまだ短い人生の中でも最高の思い出になりました。

 当日に、論文のテーマが発表されてからは、なぜかペンを握る手が止まらなくなり、次々と文章が頭の中で渦を巻いているようでした。本当に、誰かに導かれていたような気分で試験時間2時間の内の30分間を過ごし、会場を去りました。

 話が変わりますが、僕が妖怪を好きになったきっかけは、一枚の絵でした。ある小説の最初にそれは載っていて、とても美しかったです。「魍魎(もうりょう)」というのがその絵の題名で、幼い頃の僕は何か魅力を感じたのでしょう。絵を描いていたのは、「鳥山石燕」という江戸時代の浮世絵師でした。そこから書店で彼の画集を購入し、妖怪道に没頭し始めました。

 他にも、妖怪が好きになったきっかけの小説家の先生の本を読んだりして、次第に妖怪だけでなく、変わった趣味なんかもできて、生活がとても充実しました。これも全て妖怪のお陰だと思ったら、妖怪と出会わなかった人生が恐ろしいです。

 絵解き、妖怪考察など、色々考えて妖怪の本質を暴こうとしたもことありました。しかし、幾ら考えても、答えは分りませんでした。いや、答えは無かったのです。どの文献にも妖怪の本質の答え合わせコーナーなんて存在しなかったのでした。そうして妖怪を考察した結果は、独りよがりの妄想で終わってしまうのだと考えていたのですが、それは思わぬ形で表現できたのです。

 それが、妖怪検定上級の論文でした。文章が次々と浮かんだのも、以前から考えていたからかもしれませんし、ネットで合格発表を見たときは、僕の考えが認められたのだとも思いました。

 もちろん、それで満足はしていません。故・水木しげる大先生の代わりに、と言ってはおこがましいのですが、一人、そして一匹の「妖怪馬鹿」として、生涯を捧げたいと思います。

世界妖怪会議場の看板前に妹とともに立つ平井春希くん(右) ⓒ水木プロ